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  in  北京〜モンゴル
     
          2度目の国際列車             
          
 
 
 
 
今回2度目の国際列車に乗れる日が来た。

北京から国際列車で30時間1,570km、ルートとしてはちょっと寄り道だが絶対行きたかった国モンゴルへ向かう。

列車の旅も随分慣れてきたが、いつも乗車から出発までの時間は緊張する。
個室の場合同じ部屋をシェアする人々によりその旅の良し悪しを大きく左右されるからだ。
今回の移動は30時間あり、さらに国境を越えるので余計にドキドキする。

事前に硬臥のチケットを購入した。中国国内と同じ6人部屋だと思っていたが、実際に入ってみると4人部屋だった。
以外に余裕のあるスペースが確保でき気分がノッてくる。

先に乗車して迎えてくれたのは初老の白人。

「Welcome to our room!」

感じの良い人で安心する。良い旅になりそうだ。
彼の名は「ウォルター」。ロシア系カナダ人で冷戦後10年はキューバで暮らしていたらしい。自分では元KGBだと言っていたがホントかジョークかを見極める英語力はワタシに無い・・・
何故か彼自身のアドレス入り2006年手帳を貰う。

次に入って来たのはオーストラリア人の「ブレッド」。すらっとしたハンサムで、ケアンズ在住。モンゴルの友人に会った後シベリア鉄道でモスクワに行くらしい。

最後にやたらと大荷物を抱えて入って来たのはアメリカ人大学生の「アン」。ミシガン州立大学で自然科学を専攻しており、なんとモンゴル語がペラペラ。2ヶ月現地で調査活動をするらしい。持ってきたバックは合計6個!「先に送っとけよー。」と後でみんなからツッコまれていた。

全員欧米人でちょっとホッとする。。。

だって中国人すぐ部屋を汚くするからさー。ひまわりの種とか床にペッペ吐くし。

メンバーに恵まれ、ウォルターを中心に数時間喋りっぱなし状態が続く。私は最初の1時間で緊張が切れ、あとは「アハー」とウナヅクのみ。
話が難しくなりあまり参加は出来なかったが途中で夕食を食べに行ったりと和やかな時間が過ぎる。


この鉄道には珍しい特徴があり、中国とモンゴルは列車の幅が違う為国境付近で車輪を載せかえる作業を行うらしい。しかもそれを乗客が乗ったまま行うということで、マニアなら一度は乗ってみたい路線らしい。


夜中に近づき中国の国境駅「二連浩持(エレンホト)」に着いた。
ここでは出国審査が車内で行われる。全員が席に座らされ税関員が回ってくるが特に問題なく終了。

時刻表を見るとココの停車時間は2時間30分!30分で出国手続きは終わってしまったので、あと2時間も暇だ。
アンが乗務員にホームに出てもいいかと聞くと、OKだという。我々に続いて十数人の西洋人が外に出た。この列車は冷房が無い為、室内が蒸し暑いからだろう。

多少雨が降ってきたが外で雨宿りした方が涼しいので駅舎の隅で雨宿りしながらお喋りタイムを楽しんでいた。
そこにいたかなり陽気なオーストラリア人夫婦6人組と出会う。話も弾む。


しかししばらくすると、

ガタッゴト、ガタッゴト・・・・


列車が動き出してしまった。(((( ;゜д゜))))



なぜ?あと2時間あるじゃん!
パニックになった数人は走って列車に飛び乗った。

しかしドンドン列車は走り去る、我々は走っても追いつかないだろう。
アンにどうしよう?と言うと、多分大丈夫じゃない?多分・・・と言う。

さらに数人は列車の後を追って線路に出た。暗闇の雨の中列車を追っていく白人たち。

取り残された10名は冷静にミニ会議を開いた。

「多分車輪を付け替えて戻ってくるよ・・・」とブレッド。

「そのまま行っちゃう可能性は?」と心配するウォルター。

「荷物全部車内に置いてきちゃったー!」とオージー組の代表ローズマリー。

そうこうしていると、列車は音さえもしないくらい遠くへ行ってしまった。

・・・・・・・・・

まぁ、考えてもしょうがないか。取り合えず出発時間までは待つことになった。
雨が強くなり全員が駅舎の隅に重なる。中には鍵がかかっていて入れない。

真っ暗なホームに雨の音だけが響く。霧がかっていて、人は我々以外誰も見当たらない。

ちょっとした遭難気分だ。

陽気なオージー組は元気に話をしだした。日本のどこからだ?日本は高いよ。おれの友達は日本に居るよ。

・・・・・

30分が経過、この辺りはモンゴルに近いので夜冷え込む。オージー組は大半が半袖なので身を寄せ合って暖まっている。


・・・・・

1時間が経過、ホームの端でフルーツを売っているとの事でメンバーの一人が買いに行く。しかし誰も中国語が分からないので列車がいつ戻ってくるかは不明だ。

・・・・・

1時間半が経過、アンが心配そうな顔つきで「ちょっと周りを見てくる」と言って雨の中走っていった。

全員に少しずつ緊張感が高まる。

ローズマリーが私に聞いてきた、「あなた心配?」

私は答えた、

「It’s OK ・ ・ ・ ・ ・   
 Maybe・・・」(-.-;)y-~~~

「Why Maybe!」


ローズマリーは笑いながら発狂して私の頬に両手を押し付けてきた。
やはり彼女も心配らしい。

・・・・・



数分後、ホームの逆端から多数の人達がゾロゾロ出てきた。
近づいてみると、全員モンゴル人だ。

なんだ、逆側に待合室あるじゃん!

しばらくすると列車がホームに戻ってきた。

オージー組は「YEAHHHHHH!」と叫び喜ぶ。

結局雨で視界が見づらく、何も分からない外人だけが寒い中外で待ちぼうけをしていたらしい・・・


しかしお陰で車内での団結はピカイチになった。
ローズマリーからはオーストラリアにきたら家に寄れと言われ、熱い抱擁を受ける。

無事ウランバートルに到着した後、一旦解散し市内のレストランで夕食を同室のメンバーで食べた。

ブレッドの知り合いはJICAのスタッフらしく、日本語の話せるカナダ人女性を連れてきてくれ、盛り上がる。
モンゴルは初日からいい日になった。


雨とハプニングのお陰で非常にいい旅ができた。

たまにはハプニングもいいもんだ。たまにはね。


食堂車にて

 
2005年5月29日