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  in  中国(福建省)
     
           客家円楼に宿泊    
          
 
 
 
 
中国の南東部、上海から香港・広州にかけての華南地方にはその昔「円楼・方楼」と呼ばれる外壁を土や石で城壁のように囲んだ巨大集合住宅を創る慣習があった。

形は円形や楕円、四角形のなど様々だが共通しているのはその中に一族が互いに助け合って生活をしている事だ。

大きいものは五〜六階建てにもなり、直径も60mや80mの円楼になると500人以上の一族が暮せるものもある。
「客家(ハッカ)」とは大まかには華南地方の人々のことだが、客家方言を話す人々を総称して言う場合もあるらしい。現在世界中で活躍する「華僑」と呼ばれる人々の多くはこの「客家」出身だと言う。

私がここに行くキッカケになったのは名古屋にあるロフトで旅行人ウルトラガイドの「客家円楼」をたまたま立ち読みした事だった。それを読んだ瞬間、脳裏には少年時代に呼んだ漫画「闘将!拉麺男(たたかえ!ラーメンマン)」の光景が浮かんでいた。

   −−−−−−空想シーン−−−−−−−

中国の山奥でひっそりとたたずむ巨大な土楼。その周りでは農民達が真面目に田植えをしている。
ある日突然丘の上から何十人もの盗賊が馬に乗り村を襲撃しようとやって来た。

田植えの途中だが鍬を投げ捨てて土楼の中へ逃げる人々、子供を抱え懸命に走る女たち。
しかし獲物を狩る盗賊の勢いは速い。

大半の人々は土楼の中へ逃げ込むが足の悪い老人とその孫娘が逃げ遅れ、無常にも土楼の壁は固く閉ざされる。
ひとりの盗賊の弓矢が二人に向けれた。

「ひぃぃぃ〜、お助けを〜!」

「へへへ、爺さん覚悟しな!」

弓矢が放たれるまさにその瞬間、弓矢を絞る盗賊の手に石が当たり、矢は馬のすぐ下に落ちた。
「ぐぁ〜!いてっ、誰だ!!」

そこに現れる旅人「ラーメンマン!」その額にはお馴染み『中』のトレードマークが・・・・・

   −−−−−−−−−−−−−

い、行きたい・・・(;´д`)


で、思わず行きたい場所リストに加えてしまったのだ。


今回お邪魔したのはウーロン茶で有名な福建省の山奥にある円楼で中国では切手のデザインにもなっている比較的有名な円楼。
以前に某ウル○ン滞在記にも紹介された『承啓楼』という土楼。

上海と香港の間にあるアモイ(厦門)という海沿い都市からバスに乗り4時間半のところにそれはある。
承啓楼は数ある土楼の中でも行きやすい場所にあり、通常ならバスを降りてから現地のバイクタクシーと交渉して数時間さらに奥地に行かなければならないが、ここは土楼の前をバスが停まるので、大荷物を持っていても行ける。

バスを降りると目の前にドーーーンとそびえる大きな土楼。
まるで中世ローマの闘技場を思わせる威圧感だ。

入り口には昼間っから何をするでもなく数人の老人が座っている。
取り合えず建物の写真を撮って、大荷物を抱え土楼に潜入。入り口で入場料を払う。30元。

建物の内側を見ると、土壁の外側からは想像がつかないほど全てが『木』で作られており、4階建ての住宅には無数の扉があった。
まさに日本のアパートを大きくしてさらにぐるっと丸曲げた感じである。

中をウロウロしていると一人の爺さんが声を掛けてきた。
招かれるままに「214」という家に入るとお茶が出てきた。何か喋ってくるが分からないので筆談をすると、どうやら家に泊まっていけということらしい。この展開は旅行人ガイドにも載っていたので、快く泊まらせてもらうことにした。

美味しいお茶を飲み終わると部屋に案内される。3階の1室を紹介される。
以前に調べたネットでは「部屋は非常に汚く、布団は何年も干していない感じで寝袋を持参した方がよい」という情報だったので気合を入れていたが、見ると結構キレイだ。外は大昔の造りだが、部屋の中は数年前に改築された感じだ。恐らく別のお宅の情報だったのだろう。

ホッとした反面、キレイすぎてちょっと残念な気もする。旅人の複雑な心理である。

部屋の中を見ると、何故か壁には赤ちゃんの特大ポスターが2枚も飾ってある。本棚を見るとアルバムが3冊、中を拝見するとそのひとつは結婚式のアルバムで他の二つはお嫁さんの若い写真であった。

推測するに、嫁に行った爺さんの娘の部屋だろう。爺さん意外と若いのかな?

トイレは土楼の外に木造の厠がある。もちろん「ニーハオトイレ」、場所によっては外からも丸見えである。
少し歩くと、比較的新しいコンクリート製の公衆便所があった。世界遺産登録に向けて外人用かな?と思ったがここもニーハオトイレであった。男女が分かれているだけましだが。

小便はどうするかというと、廊下の各箇所に桶があり、そこに溜めるらしい。やりにくいので私は外で用を足す。


多くの土楼は現在ほとんど人が住んでおらず荒れ果ててしまうものもあるが、ここは実際に百人以上の人々が住んでいるので活気がある。
楼の中心には廟があり、お線香が絶えない。1階の部屋と廟の間が炊事場になっており、朝になると野菜を洗っている人や、歯を磨いている人、髪を洗っている人などがいる。鶏やアヒルなどもそこに放し飼いだ。

周辺にもいくつか土楼があるので、昼間は数個の土楼を見学。承啓楼が一番立派だ。

夜になるとさすがに「田舎の夜」という感じで辺りは暗闇につつまれる。
簡単な夕食を終えると、いきなり雷がなり土砂降りの雨が降ってきた。

我々は入り口付近に逃げるが集中豪雨のような土砂降りの為身動きが取れない。
10畳くらいのスペースに8人、頼りは貧弱な電球だけ。みんなお互いの顔がほとんど見えない状態で世間話をした。

ふと、小学生の夏休みに遊びにいった祖母の家を思い出した。
もう20年前の事だ。同じように暗い中、雷が去るのを待っていた記憶がある。


ゆっくりとした時間を過ごす。


30分ほどすると雨が小降りになったので部屋に入ることにした。
まだ20時前だが、田舎の夜は早い。

枕に頭を載せると「キツイ防虫剤」の匂いがしたが、気にせず寝る。

朝起きると、ちょっと頭が痛くなっていた。

多分「防虫剤臭い枕」と冷え込みのせいだろう。まぁいっか。
これにより数日後39度の熱に悩まされることになるのだが、この時は知る由も無い。

朝飯を食べ終え、散歩を済ますともう帰りのバスの時間になる。
本当はもう少し長居をしたいが、先の予定が詰まっている。

お世話になったジイサンともお別れだ。
バスを待っているとジイサンが自家製のタバコをビニールから取り出し、紙に巻きはじめた。
ここはタバコの名産地らしい。

「いるか?」と言われる。

私は数年前からタバコを辞めていたが、ちょっと興味もあったので貰うことに。

するとジイサンここぞとばかりに目一杯の葉をつかみ取る。
通常の3倍くらいある紙タバコをくれた。

それなりに美味しかったが、キツイよ!これ。

後で考えるとコレで喉をやられ、風邪を引き起こす決定打になっていたんだろうか・・・

かくして土楼体験は無事?終了した。


この地区は現在世界遺産に申請中で、上手くいけば2008年(北京オリンピックの年)に登録されるかも知れないとか。
そうなったら中国式に整備され入場料とかも法外な料金を設定されるに違いないので、行きたいと思っている人は早めの方がいいでしょう。




 
2005年5月14日