TOP > 世界旅行記目次 > 旅行記33 イラン
   
  in  イラン
     
        キャバーブ・バーガー・水タバコ
 
          
 
 
 
 
イスラム教シーア派最大の国家イランに入った。
この国はアメリカから「悪の枢軸」と名指しされ、1997年から経済制裁を強いられている。

イランに関して、多くの日本人は「ペルシャ絨毯」と「ペルシャ猫」、そして「イラン・イラク戦争」の印象が強い国だろう。
いや、その印象しか無いといって良いかもしれない。かくゆう私もこの旅行をする以前はそれ以外に「ペルセポリス」と「地震で崩壊したバム遺跡」位しか想像が出来なかった。

約一ヶ月イランを旅してその印象がどう変わったかというと、
「イラン・イラク戦争」
     ↓
「バーガー・キャバーブ・水タバコ」となった。

イランを長期旅行した日本人でイラン人の食文化に疑問を覚える輩は少なくないと思う。何せ外食産業に携わる人々に「向上心」というものが感じられない!選択できる食事が少なすぎるのだ。
町の大きさに係わらず、ブラブラ散歩をしていると一番目に付くのは「サンドイッチ屋」。この店ではチキン・ビーフ・マトン・ソーセージなど幾つかの種類から選ぶ事が出来るが、ジャンルは全てサンドイッチ。日本でいうハンバーガーである。

経済制裁の影響でマクドナルドやKFCは無いので、全て個人経営の店になる。しかし経営がバラバラにも係わらずその内容はほぼ同じといっていい。多少値段や量や肉の質が違うだけでビーフバーガーを注文すると、毎回肉・トマト・レタス・ピクルスをパンではさんだものが出てくる。


次に多いのがキャバーブ屋。
日本では「ケバブ」といった方がわかりやすいだろう。
肉を大きな縦の串に重ねて刺し、それを回転させながら焼き、外側から削るようにそぎ落として食べたり、バーベキューのように小さな串焼きのスタイルもある。これもビーフ・チキン・マトンなど種類はあるがとにかく『焼肉』。
肉を焼くだけ。

通常キャバーブを頼むと、焼きトマトとナンが付いてくるので適当に千切りながらナンで包んで食べる。

この2種類は専門店のスタイルが多く、「うちはバーガーだけ!」「うちはキャバーブオンリー!」という
とにかく焼くだけの店が多い。街で見かける食堂の8割はこのどちらか。

レストランに入るとこのほかに「チョロウ・モルグ」という焼いたチキン&ライスという選択肢も出てくるが、大抵この3種類から食事を選ぶといってもいいだろう。選択肢少ねー!
チョロウモルグ
勿論1,000円以上出して高級なレストランで食事をするなら別だが、毎日の食事に金をかけないバックパッカーに関しては、ひと月居ると拷問だ。


多くのバックパッカーがイランでは自炊を始める。それまで自炊を主とするパッカーは勿論、「自炊は面倒臭い派」のパッカーも諦めてパスタ
などを作り始めるのがここイラン。私の周りにも「自炊開始組」がチラホラ居た。

幸い私は本来「ジャンクフード大好き」な人間なので、この際飽きるまでバーガーを食べまくろうと決意したものの、肉は大好きなので一ヶ月食べ続けても飽きが来ず、他のメニューを捜そうという意欲もそれほど無かったので何とか乗り切ることが出来た。

私がイランに滞在した25日間で食べたものをチェックすると、朝飯は食べないので毎日昼夜の2食×25日で50回食事をした内訳はキャバーブ13回、バーガー19回、チョロウモルグ7回だった。。



バーガー・キャバーブ・バーガー・チョウロウモルグ・バーガー・キャバーブ・バーガー・キャバーブ・バーガー・チョウロウモルグ・バーガー・キャバーブ・バーガー・・・・・ヽ(`Д´)ノ ウギャ〜〜

今思うとこの異常なサイクルで毎日「肉肉肉肉」よく食べたなぁと我ながら感心。。。





結局何が言いたいかというと、

イラン人は中国人を見習え!(食事限定♪)

ということである。


考えてみると、イラン人が他のアラブ人と比べても異様に体毛が濃く、眉毛繋がってる&女性に髭生えてる確率が各段に高いのはマトン(羊肉)食べすぎという噂もあるし、大体が肉ばっかり食べすぎなんじゃない?という疑問さえ感てくる。

ベジタリアンのインド人も体毛(髭)濃いんで私の偏見かも知れないけどね・・・。



イランで新しくハマってしまった事といえば、「水タバコ」。
水タバコは中東全般に広く普及している嗜好品で、

↑のような物を使い、水を通して煙をすうタバコの一種。
パッと見は印象が悪く、一見イケナイモノでも吸ってるんじゃないかと思いがちだが、意外にもタール量も少なく(0.5mg位らしい)どちらかというと匂いを楽しむもの。オレンジ・アップル・バナナ・イチゴ・ミントなど色々な種類のタバコがあり、近くに居るだけで柑橘系のいい匂いが漂ってくる。

これをチャーイ・ハーネ(中東風喫茶店)でチャイ(紅茶)を飲み、世間話をしながら皆で回し吸いするのだ。
酒類厳禁であるイスラム文化の中で広がった独特の嗜好文化だろう。

最近は日本でも流行っているらしく、中東料理の居酒屋なんかで見かけることもある。
一度興味本位で吸ってみたら、口元で広がるフルーツの香りにハマってしまい、暇を見つけては水タバコ屋を見つけてプカプカやるハメになってしまった。

チャーイハーネで有名なのはイラン最大の観光地エスファハン。
500年前には「世界の半分はここにはある」といわれた大商業都市だった。その頃のペルシャ建築は素晴らしく、町全体が見所になっている。

有名なのはエマーム広場の地下にある「伝統チャーイハーネ」


や、広場の2階にある「展望チャーイハーネ」
エマーム広場を眺めながらの一服。
さらには橋のたもとにいくつか見られるのだが、ここはオフシーズンということで週末のみ営業しているようだった。

私の一番のおすすめはヤズドのシルクロードホテルにある中庭レストラン。値段は多少高いけどその雰囲気は最高。水タバコに生フルーツを入れるスタイルで新鮮な香りが楽しめる。私はホテルを出発する5分前までプカプカやっていた。
リラックスしながらの一服。
これから訪れるエジプトやトルコでも盛んなので中東水タバコ巡りが楽しみである。


イランで一番印象に残った観光地はシーア派の聖地マシュハド。
ここは8代目エマームレザー(一番偉い人)が殉教した場所で、聖地の中でも特別視されており年中巡礼者が絶えない。イラン国内だけでなく近隣諸国からも大勢の巡礼者が殺到する為、テヘラン−マシュハド間の列車はいつも2週間先まで満席という状態だ。

日本で例えるならば、「毎日が初詣の神社状態」という表現が近いだろうか。

直径約400mほどある円形の敷地には、聖墓の他に博物館や大学・図書館・本屋など様々な施設があり、博物館は異教徒にも解放されている。

中心にある聖墓は巡礼者の為に24時間解放されており深夜でも人並みが絶えない。

とかくイスラム教シーア派の国といってもいいイランにとっては、「国民の信仰がココにある」といっても過言では無いだろう。
通常、偶像崇拝を禁止するイスラム教にとってもココは特別例外的な場所である。

原則はムスリム以外進入禁止だが、信仰の中心を目の当たりにし居ても経ってもいられなくなった私はダメモトで聖墓に近づいてみた。

周りの巡礼者と同じように入り口の扉に唇を当て、感慨深い表情で入場。無事内部潜入。

黄金に輝くドームの中にある棺は金色の柵で囲われている。
聖墓に近づくと、人々は争うように少しでも棺に近づこうと押し合いをしていた。

ある者は必死な顔をして柵の間から手を伸ばし棺に触れようとしている。

ある者は柵にしがみ付き、人々に押されながらも感極まって泣きじゃくっている。


もちろん私にとっては単なる偉い人のお墓なのだが、彼らにとってはココが全てのような気さえ感じた。

私はそこでイラン国民のすばらしい信仰心が悪い方向に向けられないことを祈った。


 
2005年12月28日