TOP > 世界旅行記目次 > 旅行記17 ゴルムド−ラサ
   
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          闇タクシーにてラサへ  
          
 
 
 
 
敦煌から砂漠を抜け夜行バスでチベットへの玄関口「ゴルムド(格尓木)」という町へ到着した。
今回の旅でひとつの節目となるチベットが近づきいよいよ興奮を覚える。

何故節目かというと、出発からチベットまではほぼ事前に決めていたルートを計画通り順調に進んできたが、ここからは多分に変更を余儀なくされる可能性が高くなる地域だからだ。

チベット自治区は勿論中国の一部だが、基本的に外国人の自由旅行を認めておらずパスポート(15日を超える場合は査証)の他に旅行許可証(パーミット)というものが必要になる。面倒くさい。

チベットの中心地ラサに入る為にもそれが必要。基本的には空路・陸路共に旅行会社を通せば簡単に入手できるのだが、問題は費用が高くつく事だ。空路の場合、一番安い成都からで2,000元(26,000円)前後、これは航空機を利用するので仕方ないとして、陸路の玄関口ゴルムドからでさえも約1,700元(22,000円)掛かる。形としてツアー形式になり、何故かバスで5日間のツアーを強制的に組まされるのでコストは跳ね上がる。現地人がたかだか250元(3,200円)前後で行けるゴルムド−ラサ間の片道バスのみ利用したい場合も、規則どおりツアー代金全額を支払って、ラサに着いたらツアーから離団(権利放棄)するということになる。極めてバカバカしい。

その差は約19,000円、ただ「チベット人居留区」に行くだけなのに!
さすがは中国、漢民族の国である。

途中の検問を通過し一旦市内に入ってしまえば特に市内でチェックは無いので大手を振って観光が出来るのだが、そこからチベット内の別地域(西チベット)に足を伸ばす場合、さらにその地域の旅行許可証が別に必要になる。メチャ面倒くさい。
歴史(漢民族VSチベット人)から見てもそれだけチベットという地区は中国人(漢民族)にとって特殊な地区なのだろう。

本当にひとつの国なのか?疑問を覚えるが、中国人のチベット侵攻の話をすると長文になるのであえて触れずにおく。


この制限により一般の旅行者に取って行きづらい地域ではあるが、一方ではそういう地域だからこそ「一度は旅をしたい」と旅心をくすぐられる場所でもある。

海抜4,000mを超え「世界の屋根」と呼ばれる地域に信仰のあついチベット仏教の民が住み、普通にパスポートを持って行っただけでは入れない、規制が多く費用と日数が必要な地域、チベット。
「ダライラマの宮殿」ラサのポタラ宮、仏教の聖地「カイラス山」、さらには秘境「グゲ遺跡」など多くの見所が点在する。
ここは多くの旅人が一度は訪れたいと思う「神秘の国」なのだ。
冷静な表現をすると、旅人にとって「多少障害があり未知の世界に足を踏み入れる事による冒険心をくすぐられる僻地」なのだろう。

空路を利用すれば最近は手軽に行く事が出来るが、陸路で入る場合は文字通り「秘境」の部類に入ると思う。
旅行には色々な楽しみ方があるが、今回私は人々の暮らしの移り変わりが見たくて陸路を選んでいる。手間も時間も掛かるが、特に今回の移動は陸路を選択できた自分が幸せ者だと感じる事が出来た道のりになった。


お金が勿体ないバックパッカーは自然と陸路でラサを目指す。
そして正規のバスチケットは買えないので、闇ルートを使うことになる。

方法はいくつかある。
@闇バス(ブローカー経由でバスチケットを買い、寝台バスに乗車。運ちゃんもグル)400〜700元くらいらしい
A闇タクシー(通常の乗用車をチャーターして突破。運ちゃんはそのルート専門職が多い。)2,000元くらい/1台
B闇トラック(貨物トラックの荷台に載せてもらう有料ヒッチハイク。すごい時間が掛かる)250〜400元くらい
Cチャリで突破(よく欧米人が検問で捕まっている)罰金実費

勿論成功率は100%ではない。最近は検問で捕まると罰金500元&ゴルムドに戻され強制的にツアーに参加(1,700元)させられるらしい。夏の旅行シーズンになるほど厳しいらしいが、その年で状況が違うので何とも言えない。
ただ、捕まるとかっこ悪いのは確実だ。

今回我々(敦煌で一緒になった野郎3人組)は一番成功率が高いと言われている闇タクシーを利用する事にした。。
朝、列車が到着する時間には駅前に闇タクシー業者がウロウロしているという情報を聞いていたので、朝9時頃駅をうろつく。
しかし、居るのはホテルの客引きばかりでそれらしき姿は見えない。早速情報と違うなぁ・・・

すると、そこに知った顔の中国人が通りがかった。
ナント2ヶ月前麗江(雲南省)のゲストハウスで同宿していた広州出身の「エリック」(上流階級なので英語名を持っている)だった。
すごい偶然である。ナイスタイミング。

「おぉぉ〜!エリック久しぶりだね〜!!ちょっと通訳やって!

再会して早々に20時間バス移動をしてフラフラの彼を強制的に助っ人として雇う。(無料)
中国語と英語が話せるエリックはとても心強い。まさに運命の再会だ。彼はそう思ってないと思うけど。

ちょっと顔の引きつった彼はダルそうにホテルの客引きおばちゃんに声を掛けた。
中国語でペラペラ喋るので全く会話はわからないが、どうやら闇タクシー関係者を呼んでくれるらしい。

さすがはエリック、我々を無事チベットに連れて行く為に生まれて来た男。(ごめんねエリック)
右がエリック

しばらくするとひとりのチベットがやってきた。
値段を聞くと、ひとり800元(1台2,400元)だという。まぁファーストプライスとしては妥当だろう、ここは中国、言い値の国。
しかし私は中国を2ヶ月旅した手練の旅人だ、彼の心理が手に取るようにわかる。

しばらく交渉してひとり600元(1台1800元)になった。本当は500まで下げたかったが、エリックも疲れているのでここらで手を打つ事に。
この時期の相場が1台2,000元なので、まぁまぁだろう。

念のため書面(中国語)で契約の確認をする。
@支払いは最初の検問を無事通過したら半額払い、ラサで残金を払う。A公安に捕まってゴルムドに戻された場合は全額返金Bガソリン代・車の修理代は費用に含む。
などなどである。このあたりのトラブルが多いらしい。

助手席1名、後部2名でゆったり行こうと思ったが、ドライバーの他にもう一人中国人が付くと言われる。情報には無かったので疑問に思うが、もし検問に引っかかった時に中国語を話す人間が必要だと言う事だ。
理由がもっともなので渋々了承。後部座席男3人キツキツで行く事になったが仕方なし。

後になって気付いたが、助手席に乗った中国人はただの客であった。それならもっと料金交渉をする余地があったのだが、途中で揉めて降ろされても困るので今回は我々の負けにしておいてやろう。
闇業者の方が一枚上手だった。

食料を多少買い(あまり必要なかった)10:50にゴルムドを出発。

情報では検問は3箇所。1箇所目は出発1時間後にあったが人はおらず。無事通過。昼食場所で半額を支払う。
車は果てしなく続く地平線に向かって爆走する。

しばらく走ると周りが雪山になった。雄大な景色に見とれる。道も大工事が終了し大半が舗装道路になっていた。多少ガタツクが悪くない。

15:30 車が止まる。電気系統の故障らしい。修理に1時間かかる。

20:30 5,200mの峠を越える。空気が薄い。助手席の中国人はもどしていた。我々は快調♪

21:00 第二チェックポイントを越える。検問にあるのは車のみで特に問題なし。

02:00 再び故障。20分停止。周りに何も無いので直ってよかったと心底思う。車が1台横転していた、寒い中ご苦労さん。

04:20 第三チェックポイント通過。一番問題の検問なので緊張するが、早朝の為職員は部屋の中で爆睡していた。。。ラッキー。

04:40 無事ラサ市内到着。しかし目的の宿まで5km地点で車を止められる。
ドライバー: 「チャーターはここまで。あとはタクシーで行け!」
あまりの理不尽さにムッとするが、残りの代金からタクシー代100元引くぞと言うと渋々タクシー代を払っていた。
なぜそこで車を止めたかは未だに不明。(車両通行の制限があるのかも・・・)
ちょっと険悪な雰囲気でドライバーと別れる。(ちょっと残念)

数分後、タクシーの窓から憧れのポタラ宮をみて歓声を上げる。
それまでもイザコザはどこへやら。しばらく夢心地。

05:00 ホテルチェックイン&バター臭い部屋で爆睡。

1,100km18時間移動の末、祝ラサ到着。
着いてみれば何の事は無い移動だったが、たまに運転手が状況に慣れていないと捕まる場合もあるのでラッキーだったのだろう。
あまり自慢できる移動方法ではないが、納得がいかない不合理な制限に対して抗議の意味もあるのだ。




★2007年にはゴルムド−ラサ間の鉄道「青蔵鉄道」が開通するらしい。
ただでさえ漢民族によって段々チベットらしさを失っているラサの町並みだが、鉄道が開通する事により一層チベットの漢民族都市化は避けられないだろう。大理・麗江など他の世界遺産都市のように中国人団体観光客(みんな何故か同じ帽子を被っている)で埋め尽くされたチベット寺院は正直あまり見たくない気がする。

今年来ておいてよかった♪

来年から試運転を始める「青蔵鉄道」だが、線路はほぼ出来上がっており後は数箇所の高架部分と駅の建設を現在行っていた。
すでに貨物列車が走っている区間もあるようで、途中2回見かけた。
    

ラサ人民化まであとXXX日・・・


トイレ休憩・・・

 
2005年6月25日