TOP > 世界旅行記目次 > 旅行記35 サナア
   
  in  イエメン
     
        歴史に取り残された街サナア
 
          
 
 
 
 
「砂漠の摩天楼シバーム」があるサユーンから27箇所の検問を越え、最近外国人旅行者誘拐が多発するマーリブを通り抜けイエメンの首都サナアに着いた。

ここは今回の旅で「絶対に行きたい場所ベスト10」に入っていた憧れの地だ。(何かいつもそんなことを言っている気もするが・・・。)

海抜2300mの高地に位置し現存する「都市」としては世界最古だといわれており、その歴史は2500年以上にも及ぶという。
何でも「ノアの箱舟」で有名なノアの息子が放浪の末たどり着き、神の啓示を受けて開いた街だそうだ。
歴史のある街に神話はつきものなので昔話の信憑性は別にしても、とにかくすごい歴史を持った街ということは確からしい。

世界遺産に登録されている旧市街は約5kmに及ぶ市壁に囲まれており、一歩足を踏み入れるとそこには「アラビアンナイト」の世界。

アラビアンナイト・・・・・。(´ー`)

この言葉には何か不思議な響きがある。日本の文化からかけ離れた異国の響きだからだろうか、どこか神秘的な感じがしてワクワクする。厳密に言うと何処の地域を指してそれを言うのか私は知らないが、そんな言葉がピッタリだろうと思った。

サナアに到着した私は、まず遠い昔から旧市街の玄関口としての役割をになってきたババールヤマン(イエメン門)に向かった。
かつて城壁に囲まれた街にあった5つの門の中で唯一現存するのがここである。
イエメン門
1000年以上前から旧市街への通行人を見守るババールヤマン、古代の人々と同じ場所(門)から旧市街へ入ってみる。


はたして私は何人目の通行人なのだろうか?

・・・想像もつかないがものすごい数だということは間違いない。気が遠くなるので深く考えないことにする。



中に足を踏み入れると、なぜか国境を跨いだような気分がした。

城壁の中は明らかに「外界とは違う空気」が流れている。

日干しレンガの薄茶色と漆喰の白色で統一された建物、その密集度。
中央を抜ける道端にずっと奥まで続くスーク(専門店街・市場)、人々の活気。
迷路のように張り巡らされた狭い路地。

まさにここだけ歴史が止まった感じがした。自分が過去の世界に迷い込んでしまった錯覚を覚える。


男性は白いイスラム服を着て、腰にはイエメン人の誇りであるジャンビーア(三日月型の短剣)、昼間から何をするでもなくカート(噛むと覚醒作用のある葉、日本人がビールを飲むような感覚)を頬一杯に溜め「コブ取り爺さん」のようになりながら日向ぼっこをする者、道端でシャイ(紅茶)を飲みながら談笑する者がいる。

対照的に女性は黒い衣装に身を包み、寄り道することなく荷物などを持ちイエメン門を通り過ぎる。外でカートを噛んでいる者やシャイを飲んで寛いでいる者は誰一人としていない。彼女達にとって落ち着ける空間は「家族と家の中」だけなのだろうか。全員が個性を失った状態で黙々と歩いている。


恐らく人々が「携帯電話」を持っている事を除いて、私は今数百年前とそれほど変わらない風景を見ているだろう。
それは建物のみならず人々も然り。ここでは時の流れがゆっくりしているようだ。そんな事を思いながら旧市街に吸い込まれていく。


一応地図は持っていたが、それを見ずに路地の中へ入り気の赴くままに歩いてみた。
当然道に迷うが、それも楽しみのひとつ。

狭い道の周りには4階〜8階建てくらいの密集した建物が私を圧迫する。一階の入り口は概して狭く、上に行けば行くほど窓が広くなっていく。
最上階には皆でカートやシャイを楽しむ団欒の部屋があり、ステンドガラスの模様が綺麗だ。
歴史を感じさせてくれる家の入口
ひとつ角を曲がると道はさらに狭くなるが、さらに進む。奥に吸い込まれるようにして足を進める。

初めて見る類の「視界」に興奮を覚えシャッターを押しまくる自分がいた。10m歩いては1枚撮って、子どもが居れば彼らを撮って・・・。
そんなことを繰り返しているうちに数十分で100枚以上も写真を撮ってしまった。

デジカメで良かった(^_^;)。
いい景色と写真を撮る数は比例するものだ。デジカメなら要らない分を簡単に消去できる。
ただいつも宿で確認するとほとんど同じような画像だらけで、ほとんど消してしまうのだが・・・。


フラフラ歩いているうちに旧市街の中にある伝統建築スタイルのホテル「サナア・オールドパレスホテル」に着いた、ここは比較的安価なのでバックパッカーに有名だ。特に泊まる気は無いのだが、屋上からの眺めが素晴らしいみたいなので、部屋を探すフリをして屋上を見せてもらう。普通に「屋上の景色が見たい」と言うと100リアル取られるらしい。

狭く急な階段とのぼって8階の上にある屋上に登ってみると、

見事な景色が広がっていた。

感無量!v(≧∇≦)v

この景色を見るためにアラビア半島をぐるっと回ってきたのだ。
しばらく目の前に広がる景色に見惚れた後、例のごとくシャッターを押し捲る。

10分くらいあーでもないこーでもないとアングルを変えながらパシャパシャした後、屋上の椅子に腰掛けた。


冷静になり、もう一度景色を楽しむことにする。



長期の旅をしていると、「残念だけど感動が薄れていく」という旅行者は沢山居る。
それは「非日常」が「日常」に変わってしまった長期旅行者にとっては避けられない事だろう。
かくいう私もイスラム世界に入ってはや4ヶ月。すでにイスラム式のフォート(要塞)は若干見飽きている感があり、あまり触手が伸びないのが現状である・・・。

ただ「トラベルマスター(仮称)」を目指す者としては、旅を楽しむ中での重要事項である「景色に感動する」という事を疎かにしてはいけない。
「いつでも感動できる状態」できる状態を保っておかないと、折角仕事を辞めてまで来た旅行が勿体ないと思う。


そこでいつも私がやっている方法で景色を楽しむことにする。
たいした方法ではないが、もし「最近感動が薄れちゃって・・・」という人がいれば試してみて下さい。

@座った状態でリラックスした体制を取り目を閉じる。
※立ったまま目を閉じると不安定なので座りましょう。

A精神統一して頭の中を真っ白にする。もしくは旅を出発する時に日本の空港で感じた事などをなるべく細かく思い出す。とにかく今何処に居るかを忘れるようにし、初心に帰ることが大事。
※この時貴重品が取られないように気をつけよう。(笑)

B30秒から1分続けた後、ゆっくり目を開ける。あとは純粋にその時目の前にある景色を直感で受け止める。
※先入観を捨てて純粋な気持ちでお楽しみ下さい♪



最近特に思うのだが、旅のルートや移動手段や倹約生活に気を使っている長期旅行者は沢山居るのだが、旅の本分である「感動を覚える」事に気を使っている長期旅行者は意外に少ないように思う。折角貴重な時間を旅に費やしているのだから少しでも感動しないと損だと思うのだが。


・・・というわけでたいした事では無いが、「サンポ鑑賞法」によりもう一度同じ景色を楽しむ。

( ´∀`)ハァ〜

大体3回くらいは初心に戻れるので、時間があれば同じ景色を3回感動することができてお得♪

「最近感動を忘れちゃっってね〜」という方。初心に戻りましょう!



宿の従業員と仲良くなり、夕暮れ時にもう一度無料で来ることに成功した。
昼間とはまた違った雰囲気ですばらしい景色だ。


あ〜幸せ。(*´∇`*)

奥深いサナアの旧市街に心を奪われてしまったサンポあった。

 
2006年1月15日
 
次のサンポ→